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東京地方裁判所 昭和48年(行ウ)156号 判決 1982年10月29日

東京都渋谷区千駄ケ谷四丁目二〇番八号

原告

株式会社東荘

右代表取締役

淤見廣

右訴訟代理人弁護士

高梨克彦

山本朝光

東京都渋谷区宇田川町一番三号

被告

渋谷税務署長

中野猛夫

右訴訟代理人弁護士

鵜沢晋

右指定代理人

古川悌二

清水茂理雄

三浦道隆

主文

一  被告が原告に対し、昭和四三年一一月三〇日付でした原告の

1  昭和三七年一二月一日から同三八年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての再更正及び重加算税賦課決定(ただし、いずれも異議決定で一部取り消された後のもの)を、

2  昭和三八年一二月一日から同三九年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額八五万六、二〇五円を超える部分及び重加算税賦課決定を、

3  昭和三九年一二月一日から同四〇年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額一九三万三、三三五円を超える部分及び重加算税賦課決定を、

4  昭和四〇年一二月一日から同四一年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額一三一万四、四五〇円を超える部分及び重加算税賦課決定を、取り消す。

二  被告が原告に対し、原告の昭和四一年一二月一日から同四二年一一月三〇日までの事業年度の法人税について同四五年四月三〇日付でした再更正のうち所得金額一九七万一、三七二円を超える部分及び昭和四三年一一月三〇日付でした重加算税賦課決定(ただし、昭和四五年四月三〇日付決定で一部取消された後のもの)を取り消す。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを六分し、その一を原告の負担、その余を被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し、昭和四三年一一月三〇日付でした原告の

(一) 昭和三七年一二月一日から同三八年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての再更正及び重加算税賦課決定(ただし、いずれも異議決定で一部取り消された後のもの)を、

(二) 昭和三八年一二月一日から同三九年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額八五万六、二〇五円を超える部分及び重加算税賦課決定を、

(三) 昭和三九年一二月一日から同四〇年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額九〇万六、八〇九円を超える部分及び重加算税賦課決定を、

(四) 昭和四〇年一二月一日から同四一年一一月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額六一万〇、四七五円を超える部分及び重加算税賦課決定を、

取り消す。

2  被告が原告に対し、原告の昭和四一年一二月一日から同四二年一一月三〇日までの事業年度の法人税について同四五年四月三〇日付でした再更正のうち所得金額一〇九万七、六七六円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定並びに昭和四三年一一月三〇日付でした重加算税賦課決定(ただし、昭和四五年四月三〇日付決定で一部取り消された後のもの)を取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二原告の請求原因

一  原告は、渋谷区大和田五九所在の本館及び同区渋谷一の九の四所在の別館(別館は、昭和三九年一月二二日開業)をもって同伴旅館業を営んでいた株式会社であるが、原告が昭和三七年一二月一日から同三八年一一月三〇日までの事業年度(以下「昭和三八事業年度」という。)、同年一二月一日から同三九年一一月三〇日までの事業年度(以下「昭和三九事業年度」という。)、同年一二月一日から同四〇年一一月三〇日までの事業年度(以下「昭和四〇事業年度」という。)、同年一二月一日から同四一年一一月三〇日までの事業年度(以下「昭和四一事業年度」という。)、同年一二月一日から同四二年一一月三〇日までの事業年度(以下「昭和四二事業年度」という。なお、昭和三八ないし同四二事業年度を「本件係争各事業年度」という。)の法人税についてした各確定申告、各修正申告、これらに対して被告がした各更正(ただし、昭和三八事業年度及び同四二事業年度については再更正を含む。以下「本件各更正」という。)、過少申告加算税、重加算税の各賦課決定(以下「本件各決定」という。)、原告のした異議申立て及び審査請求並びにこれらに対する各異議決定及び各審査裁決(以下「本件各裁決」という。)の経緯は、別表一1ないし5記載のとおりである。

二  しかしながら、本件各更正(昭和三八事業年度は、異議決定により一部取り消された後の部分。以下同じ。)には、原告の所得金額をいずれも過大に認定した違法があり、したがってこれを前提とした本件各決定も違法であるから、本件各更正のうち、前記確定申告及び修正申告に係る所得金額を超える部分並びに本件各決定の取消しを求める。

第三請求原因に対する被告の認否

請求原因一の事実は認めるが、同二は争う。

第四被告の主張

一  収入除外の事実と推計の許容性

1  被告所部係官が原告の本件係争各事業年度における法人税の調査(以下「本件調査」という。)において、原告の昭和四二事業年度の売上伝票及び総勘定元帳から本館の休憩及び宿泊の年間利用客数を調査したところ四、八六三組であり、これを年間稼動日数三六二日で除算して一日当たりの利用組数を算出すると約一三組となったが、右利用組数は、原告が設立されて以来昭和四一年七月までの間原告に勤務し原告の株主にもなっていた惣滑谷美貴が昭和四五年五月七日に被告所部係官になした、昭和三七年は一日平均一五組から一七組の客数で、収入金額は一日二万五、〇〇〇円から二万六、〇〇〇円であり、昭和三八年は収入金額が一日平均三万円になった旨の申述と比較して低調に過ぎるし、右惣滑谷美貴の申述による昭和三八年事業年度の一日の平均収入金額三万円に年間稼動日数三六二日を乗じると同年度の収入金額は一、〇八六万円となり、原告が同年度に申告した収入金額五六六万円は極端に過少であることが認められる。

また、原告は、本件係争各事業年度のうち昭和三八事業年度についての当初更正(昭和三九年六月)の際に被告所部係官から受けた法人税の調査において、調査日現在の現金出納帳に記載の現金残高と実際現金残高との間に一二万〇、九五四円の差異があったこと、原告の従業員作成の売上日計表と原告代表者記帳の総勘定元帳とを突き合わせたところ、一日当たりの利用客数において調査日現在に二組の計上洩れがあったこと及び毎月一〇万円を収入除外して八千代信用金庫本店(以下「八千代信用」という。)に「淤見広志」名義をもって定期積金を行っていたことが発見されたところ、原告は右収入除外の事実を認め、右定期積金を急きょ原告名義に変更した事実があった(なお、被告は、同月一八日、原告の昭和三八事業年度以降の青色申告書提出の承認を取り消した。)。

さらに、原告の借入金は異常に多額であったから、被告所部係官が貸付先の八千代信用において右借入金の担保状況等を調査したところ、「内田信也」名義ほか六口の仮名等による定期積金が原告の借入金の担保に供され、右借入れに当たって八千代信用の貸付担当者が昭和三八年七月一七日付で作成した決裁文書(「りん議書」という。)には、原告代表者の、原告の経営は順調に推移し月平均一〇〇万円の収入があるが、表面上は対税関係を考慮して四〇パーセント強の収入除外を行っている旨の申述が記載されていた。ちなみに、右原告代表者の申述により昭和三八事業年度の収入金額を算出するとその合計は一、二〇〇万円にのぼり、そのうち収入除外額四〇パーセント強は計数上およそ五〇〇万円ということになるから、原告は、右昭和三八年事業年度の収入金額一、二〇〇万円のうち七〇〇万円を申告しているにすぎない計算となる。ところで、原告が昭和三八事業年度に実際に申告した収入金額は五六六万円であり、当該申告収入金額に前記で述べた被告所部係官の昭和三九年の調査で発見された毎月一〇万円、年間約一〇〇万円の収入除外額を加えると原告の申告収入金額は六六六万円となり、右原告代表者の八千代信用に対する申述による収入金額から収入除外額を控除後の申告収入金額七〇〇万円にほぼ符合し、原告に対する昭和三九年の調査の結果と八千代信用における右調査の結果とはほぼ一致しているのである。

ところで、被告所部係官が前記「内田信也」名義ほか六口の仮名等による定期積金等を調査したところ、次の事実が認められた。まず、八千代信用には「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」名義の普通預金が設定されており、そして右三口の普通預金は次のことから同一人の普通預金であることが確認された。すなわち、「岩田とき」名義の普通預金は昭和三八年三月五日に解約されているが、解約時の残金六四万八、九九八円はそのまま同日新設された「石川まさえ」名義の普通預金に入金され、同預金も同三九年三月三日に解約され、解約時の残金二三万三、八九八円は同三六年一二月一五日に設定されていた「淤見広」名義の普通預金に入金されているのである(なお、同預金も同三九年五月一四日に口座番号を換え(表面上は解約し新規設定となっている。)継続されたが、同月二二日に解約されている。)。次に、<1>右三口の普通預金から、昭和三七年一二月から同三八年九月までの間及び同三九年五月に、原告名義の定期積金二口(内一口は、前記昭和三九年の調査で発見された月一〇万円の収入除外額を積み立てたものである。)及び「内田信也」名義ほか一二口の定期預金が設定されていた(例えば、昭和三七年一二月五日付で積み立てられた原告名義二口及び「内田信也」名義ほか一二口の定期積金合計七五万六、〇一〇円は、右「岩田とき」名義の普通預金から七〇万六、〇一〇円を、右「淤見広」名義の普通預金から五万円をそれぞれ払い戻して積み立てられていたし、昭和三九年五月一八日付で積み立てられた原告名義及び「内田信也」名義各一口の定期積金合計二一万一、四〇〇円は、右「淤見広」名義の普通預金を払い戻して積み立てられていた。)こと(別表二参照)、<2>昭和三八年一二月三日付で積み立てられた原告名義二口及び「内田信也」名義ほか四口の定期積金合計一一二万〇、八〇〇円は、原告名義の当座預金を払い戻して積み立てられていたこと(別表二参照)、<3>右三口の普通預金から原告が八千代信用から借入れた借入金の利息が支払われていたこと(別表三参照)、<4>右「岩田とき」名義の普通預金には、原告の八千代信用からの借入金額(昭和三七年一二月四日付入金の一九万九、〇三四円)及び原告名義の定期預金の解約金額(昭和三八年一月三〇日付入金の二〇万四、五九〇円)の入金があったこと(別表七参照)及び<5>原告名義の当座預金の昭和三九年三月から四月までの入金の大部分が右「淤見広」名義の普通預金から払戻入金されていたことから、右三口の普通預金及び「内田信也」名義ほか多数の定期積金は、いずれも原告に帰属する簿外普通預金及び簿外定期積金であることが明らかとなった。

なお、右三口の普通預金のうち「淤見広」名義の普通預金は、昭和三九年五月二二日解約されているが、右解約日は、昭和三八業業年度について被告所部係官が原告に対する調査に着手した昭和三九年五月一九日と極めて接近している事実からみて、原告は収入金額を除外し、その除外した収入金額を入金していた右普通預金の存在の発覚を恐れ、急きょ解約したものであることが明らかである。

一方、本件係争各事業年度当時の原告代表者及び同人の家族の個人収入状況及びその生計費は別表四記載のとおりであって、右個人収入はその生計費を賄う程度のものであることからみても、前記普通預金及び定期積金は原告の収入金額を除外して預金されたものであることが明らかである。

2  しかしながら、原告は、右簿外の普通預金等の入金事実の詳細を明らかにする具体的資料の提示を拒否し、極めて調査に非協力的であったうえ、原告の帳簿書類の記載が前記のとおり事実に相反し信を措くことができなかったため、原告の収入金額を原告の帳簿書類によって正確に計算することは不可能であった。

二  主位的主張

(昭和三八事業年度)

昭和三八事業年度における原告の所得金額は、七五六万三、〇六二円であって、その計算内訳は、別表五昭和三八事業年度欄記載のとおりであり、争いのある項目についての計算根拠は次のとおりである。

1 収入金計上洩れ 七四〇万六、一〇〇円

原告の八千代信用における「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」名義の各普通預金は、原告が収入金額を除外してこれを右三口の簿外普通預金として隠匿していたものであるが、慎重を期して右各簿外普通預金への入金額の合計から、原告の営業収入であることが必ずしも明確でない次の基準による入金額を控除して(別表七)原告が除外した収入金額七四〇万六、一〇〇円を算出した(別表六)ものである。

(一) 小切手による入金。原告の業態は、同伴旅館であるから収入金額は専ら現金収入であると考えられるため。

(二) 入金経路が明確である借入金、振替、定期預金及び利息の入金

(三) 一回の入金額の特に多額のもの、入金間隔の特に接近しているもの等。原告の業態、事業規模及び被告の調査に基づく経験則に照らして極力原告に有利になるように考慮したもの。

なお、右により求めた昭和三八事業年度の収入金計上洩れ七四〇万六、一〇〇円に原告の申告収入金額五六六万五、〇一七円を加算した金額一、三〇七万一、一一七円は、原告代表者が八千代信用の貸付担当者になした収入除外の申述に基づき求めた原告の収入金額一、二〇〇万円と極めて近似している。

2 受取利息計上洩れ 二四万一、七三六円

原告が収入を除外して簿外でなしていた普通預金等の昭和三八事業年度における受取利息であって、別表八昭和三八事業年度欄記載のとおりである。

(昭和三九事業年度)

昭和三九事業年度における原告の所得金額は、八五四万二、五八三円であって、その計算内訳は、別表五昭和三九事業年度欄記載のとおりであり、争いのある項目についての計算根拠は次のとおりである。

1 加算金額

(一) 収入金計上洩れ 七七一万三、九〇〇円

「石川まさえ」及び「淤見広」名義の各普通預金は、昭和三九年五月までに解約されたため、その後は簿外預金への入金事実から原告の収入金額を算出することは不可能であったが、その後も簿外定期積金の一部は引き続き積み立てられている(例えば、「内田信也」名義の定期積金は昭和四〇年五月七日まで、「佐伯しず」名義の定期積金は毎月二〇万円、同年八月二四日までそれぞれ積み立てられていた。)ほか、さらに新規の定期積金が多数積み立てられていた(例えば、昭和三九年六月から平和相互銀行渋谷支店に「淤見広」名義をもって毎月一〇万円を昭和四二年五月まで、同年三月から東京相互銀行渋谷支店に同人名義で毎月二万円を、同年六月から毎月一〇万円をそれぞれ積み立てていた。)。また、原告の事業所を所轄する渋谷税務署管内で原告と同じ事業を営む青色申告法人の中から本件係争各事業年度にかかる収入金額、部屋数及び料金が明らかであり、かつ、原告の部屋数及び料金ともおおむね類似するとして選定した同業種法人(以下「主位的推計にかかる同業種法人」という。)の昭和三八年から同三九年にかけての収入金額の伸び率は極めて順調であり(別表九)、原告自身も昭和三九年一月に別館を開業しているうえ、昭和三八事業年度1(一)記載の方法により求めた原告の収入除外額(別表六)によると、昭和三八年一月から同年五月までの間の収入除外額(三四七万円)に対する昭和三九年一月から同年五月までの間の収入除外額(四〇四万一、〇〇〇円)の割合はおよそ一一六パーセントとなり、原告の収入金額も順調に伸びている(なお、「淤見広」名義の普通預金が解約された昭和三九年五月(同月二二日解約)の収入除外額については、同月一日から二二日までの間の収入除外額五七万六、〇〇〇円を一・五倍して同月の収入除外額八六万四、〇〇〇円を求めた。)。

したがって、原告の昭和三九年一月から同年一一月までの収入除外額は、原告の同年一月から同年五月までの収入除外額(四〇四万一、〇〇〇円)に、昭和三八年一月から同年五月までの間の原告の収入除外額(三四七万円)に対する同年一月から同年一一月までの間の収入除外額(六六二万六、一〇〇円)の割合(約一九〇パーセント)を乗じて算出し(七六七万七、九〇〇円)、これに、昭和三八年一二月の収入除外額四三万六、〇〇〇円を加算して、昭和三九事業年度の収入除外額八一一万三、九〇〇円を算出したものである。しかしながら、原告は、昭和四一年五月三一日に収入除外額四〇万円を益金に加算した修正申告書を被告宛に提出しているので、前記金額から当該四〇万円を控除した七七一万三、九〇〇円をもって、昭和三九事業年度の収入除外金額を認定した。

(二) 受取利息計上洩れ 四二万七、三一八円

原告が収入を除外して簿外でなしていた普通預金等の昭和三九事業年度における受取利息であって、別表八昭和三九事業年度欄記載のとおりである。

2 減算金額

未納事業税認定損 三五万四、八四〇円

前事業年度の再更正(異議決定により取り消された後の部分)に対する未納事業税について、損金の額に算入した。

(昭和四〇事業年度)

昭和四〇事業年度における原告の所得金額は、四九九万九、二六三円であって、その計算内訳は、別表五昭和四〇事業年度欄記載のとおりであり、争いのある項目についての計算根拠は次のとおりである。

1 加算金額

(一) 収入金計上洩れ 二一一万七、八二六円

原告が当事業年度において申告した収入金額は、前事業年度において相当であると認められた収入金額に比し著しく低額であり、かつ、原告には当事業年度と前事業年度における業況の変化等、当事業年度の収入金額が前事業年度のそれに比して著しく低額となる特段の事情もないため、次の方法により原告の収入金額を算出した。

すなわち、主位的推計にかかる同業種法人の原告の当事業年度に相当する期間の一室当たりの平均的な収入金額、原告の前事業年度に相当する期間のその収入金額、前者の後者に対する比率及びその平均対比率は別表九記載のとおりであるところ、原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額(審査裁決により認められた収入金額一、八二八万、八、〇〇〇円を顧客が利用可能な客室(「有効客室」という。)数一七で除した一〇七万五、〇〇〇円)に、右平均対比率(九六・五六パーセント)を乗じて原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金額を算出し、右金額に原告の当事業年度における有効客室数を乗じて年間の収入金額を算出したものであって、その算式は次のとおりである。

原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額 平均対比率 原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金額

1,075,000×0.9656≒1,038,000 ………

 原告の当事業年度における有効客室数 原告の当事業年度における年間収入金額

1,038,000×17=17,646,000

そうして、右一、七六四万六、〇〇〇円から原告の申告(修正申告を含む。)にかかる収入金額一、五五二万八、一七四円を控除し、当該事業年度の収入金の除外額は二一一万七、八二六円となる。

(二) 受取利息計上洩れ 一〇五万九、一六二円

原告が収入を除外して簿外でなしていた定期預金等の昭和四〇事業年度における受取利息であって、別表八昭和四〇事業年度欄記載のとおりである。

(三) 雑費中否認 二、〇〇〇円

原告が、昭和四〇事業年度決算において未払金(雑費)に計上しているエスロン害虫消毒本社に対する二、〇〇〇円は、そのような取引事実がなく、架空経費を計上したものである。

2 減算金額

未納事業税認定損 一一万一、〇六〇円

前事業年度の更正に対する未納事業税について、損金の額に算入した。

(昭和四一事業年度)

昭和四一事業年度における原告の所得金額は、七六七万三、二九八円であって、その計算内訳は、別表五昭和四一事業年度欄記載のとおりであり、争いのある項目についての計算根拠は次のとおりである。

1 加算金額

(一) 収入金計上洩れ 六三六万二、五四四円

原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額(一〇三万八、〇〇〇円)に平均対比率(一一一・六一パーセント)を乗じて原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金額を算出し、右金額に原告の当事業年度における有効客室数を乗じて年間の収入金額を算出した。その算式は次のとおりである。

原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額 平均対比率 原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金額

1,938,000×1.1161≒1,159,000 ………

 原告の当事業年度における有効客室数 原告の当事業年度における年間収入金額

1,159,000×17=19,703,000

そうして、右一、九七〇万三、〇〇〇円から原告の申告にかかる収入金額一、三三四万〇、四五六円を控除し、当事業年度の収入金の除外額は六三六万二、五四四円となる。

(二) 受取利息計上洩れ 二〇万一、二九四円

原告が収入を除外して簿外でなしていた定期預金(そのうち、無記名定期預金(口座番号一二八五四)は、八千代信用における「松島とみ子」及び「斉藤一郎」名義の各定期預金を解約して設定したものである。)の昭和四一事業年度における受取利息であって、別表八昭和四一事業年度欄記載のとおりである。

(三) 修繕費中否認 一万八、四四〇円

原告が昭和四一事業年度決算において未払金(修繕費)に計上している双葉電機商会に対する一万四、五四〇円及び大成温調に対する三、九〇〇円は、そのような取引事実がなく、架空経費を計上したものである。

2 減算金額

未納事業税認定損 二七万九、五八〇円

前事業年度の更正に対する未納事業税について、損金の額に算入した。

(昭和四二事業年度)

昭和四二事業年度における原告の所得金額は、九二五万三、一三九円であって、その計算内訳は、別表五昭和四二事業年度欄記載のとおりであり、争いのある項目についての計算根拠は次のとおりである。

1 加算金額

(一) 収入金計上洩れ 六三八万一、二九〇円

原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額(一一五万九、〇〇〇円)に平均対比率(一〇七・一四パーセント)を乗じて原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金額を算出し、右金額に原告の当事業年度における有効客室数を乗じて年間の収入金額を算出した。その算式は次のとおりである。

原告の前事業年度における一室当たりの平均的な収入金額 平均対比率 原告の当事業年度における一室当たりの平均的な収入金顔

1,159,000×1.0714≒1,242,000 ………

 原告の当事業年度における有効客室数 原告の当事業年度における年間収入金額

1,242,000×17=21,114,000

そうして、右二、一一一万四、〇〇〇円から原告の申告にかかる収入金額一、四七三万二、七一〇円を控除し、当事業年度の収入金の除外額は六三八万一、二九〇円となる。

(二) 受取利息計上洩れ 九六万九、〇五七円

原告が収入を除外して簿外でなしていた定期預金等の昭和四二事業年度における受取利息であって、別表八昭和四二事業年度欄記載のとおりである。

(三) 営業費中否認 三二万一、三九五円

原告が昭和四二事業年度決算において未払金に計上している次のものは、いずれもそのような取引事実がなく、架空営業費を計上したものである。

(1) 修繕費中 村野昭吾に対する 四万八、二七四円

近藤工業所に対する 四万二、六六〇円

浮田塗装工業に対する 一〇万二、三六〇円

(2) 広告費中 三栄社に対する 一二万円

(3) 雑費中 志賀ふとん店に対する 八、〇〇〇円

2 減算金額

未納事業税認定損 一一万〇、八二〇円

前事業年度の更正に対する未納事業税について、損金の額に算入した。

したがって、本件各更正は、いずれも右各所得金額の範囲内であるから適法である。

三  予備的主張

昭和三八ないし同四二事業年度における原告の所得金額及びその計算内訳は、別表一〇の各事業年度欄記載のとおりであり、主位的推計との相違は、以下に述べる収入金計上洩れの金額を除いては、本件係争各事業年度の所得金額の計算上受取利息収入を算入しない点及び予備的主張における原告の昭和三八事業年度の所得金額が再更正(異議決定により取り消された後の部分。以下同じ。)の所得金額を下回るため昭和三九事業年度の未納事業税認定損の額が右再更正の未納事業税認定損の額より減少し、三〇万七、三八〇円になっている点のみであるから、以下においては収入金計上洩れの金額についてのみ述べる。

1  原告の客室数、各客室の一室当たりの宿泊料及び休憩料から原告の本件係争各事業年度における宿泊及び休憩によって原告の全客室を一回利用した場合の収入金額をそれぞれ求め(別表一二参照)、これに、次に述べる基準により抽出した同業種法人(以下「予備的推計にかかる同業種法人」という。)の本件係争各事業年度に相当する各事業年度の宿泊及び休憩の一年間の収入金額を宿泊及び休憩によって全客室を一回利用した場合の収入金額で除算して得た右同業種法人の宿泊及び休憩による客室一室の一年間の利用回数の平均(以下「宿泊及び休憩平均利用回数」といい、その合計を「合計平均利用回数」という。別表参照)を乗じて、原告の本件係争各事業年度の宿泊収入金額及び休憩収入金額を算出し、その両者を合計したものが原告の本件係争各事業年度の収入金額である。その算式は次のとおりである。

原告の本件係争事業年度の収入金額=原告の同事業年度の宿泊収入金額(a)+原告の同事業年度の休憩収入金額(b)

(a)=原告の本件係争事業年度において全客室を一回宿泊利用した場合の収入金額×宿泊平均利用回数

(b)=原告の本件係争事業年度において全客室を一回休憩利用した場合の収入金額×休憩平均利用回数

右算式に、別表一一、一二記載の各数値をあてはめて計算したところの原告の本件係争各事業年度の収入金額は、別表一二<9>欄記載のとおりであるから、これから右各事業年度における原告申告の収入金額、すなわち昭和三八事業年度五六六万五、〇一七円、同三九事業年度一、〇五七万四、二一〇円、同四〇事業年度一、五五二万八、一七四円、同四一事業年度一、三三四万〇、四五六円、同四二事業年度一、四七三万二、七一〇円をそれぞれ控除した同表一〇収入金計上洩れ欄記載の金額が、原告の本件係争事業年度の収入金計上洩れ金額である。

前記予備的推計にかかる同業者とは、原告の事業所を所轄する渋谷税務署管内の原告と同様の同伴旅館を営む法人で、対象事業年度が昭和三七年一二月一日から昭和四〓年一一月三〇日までの間に終了し、宿泊又は休憩の用に供している部屋数が四部屋から一八部屋までのもので、かつ、一部屋当たりの宿泊・休憩料金が明らかなもののうち、<1>更正等の処分を行ったもので国税通則法の規定に基づく不服申立期間又は提訴期間の経過していないもの、又は現在審理中のもの、<2>調査により同伴旅館の収入金額を推計により計算したもの、<3>他の事業と兼業し、その収入金額の区分が計算できないもの及び<4>災害等により経営状態が異常なものについては除外したものであるが、本件係争各事業年度からすでに長年月経過していたことにより本件の審査請求において東京国税不服審判所で同業種法人の選定に当たって使用した五社の法人(主位的推計にかかる同業種法人)についての申告書類だけしか保存されていなかったため、右五社の中から前記の基準に該当する四社を抽出したものである。

なお、右同業種法人の宿泊及び休憩による収入区分は被告の調査においてその区分が明らかでないため、原告の昭和四〇事業年度の当初申告収入金額(一、五一二万八、一七四円)のうちにおいて、宿泊収入金額(一、〇二二万二、八五〇円)及び休憩収入金額(四九〇万五、三二四円)の占める割合(六七・五七パーセント及び三二目四三パーセント)を求め、当該割合を右同業種法人の収入金額に乗じて右同業種法人各社の宿泊収入及び休憩収入を算出したのである(別表一一参照)。

また、右同業種法人には、昭和四〇事業年度の申告書類等が存在しなかったので、当該年度の宿泊及び休憩両平均利用回数は、同伴旅館の客室一室の一年間の利用回数の推移が昭和三九事業年度及び昭和四〇事業年度ともおおむね同一であることが認められることから、やむをえず昭和三九事業年度の宿泊及び休憩平均利用回数を適用した。

さらに、原告の別館の昭和三九事業年度の収入金額の算出については、同館は昭和三九年一月二二日に開業しているため(昭和三九事業年度の開業期間は二月から一一月までの一〇箇月間とした。)、同事業年度の宿泊及び休憩平均利用回数の一〇箇月に相当する利用回数を用いて求めたものである。

2(一)  ところで、右合計平均利用回数を原告の年間稼働日数三六二日(昭和三九事業年度は閏年のため三六三日)により除算して本件係争各事業年度の一日一室当たりの平均利用回数を計算してみると、昭和三八、同三九事業年度、同四一、同四二事業年度がそれぞれ一・八九回、一・六七回、一・七三回及び一・八四回となり(少数点三位以下切り捨て)、前記忽滑谷美貴の申述による客室一室の一日当たりの平均利用回数一・七回程度に極めて符合している。

(二)(1)  次に、予備的推計にかかる同業種法人の選定基準のうち、調査対象事業年度を昭和四六年一月一日から同四七年一二月三一日までの間の二年間に終了する事業年度とし、部屋数を四部屋から二〇部屋までとし、昭和四六、四七事業年度の同業種法人を抽出し、宿泊及び休憩による一年間の客室一室の利用回数及びその合計ないしその平均を求めたところ、別表一三、一四記載のとおりである。

なお、右同業種法人の一年間の宿泊収入金額及び休憩収入金額については、全収入のうちにおけるその区分が明らかでないので、各事業年度の全収入金額に、同業種法人の収入金額のうちにおいて右宿泊収入金額及び休憩収入金額の明らかな同業種法人二件(昭和四六事業年度の「ホ」社及び同四七事業年度の「ロ」社)の平均割合、すなわち宿泊収入六二・九九パーセント、休憩収入三七・〇一パーセント(別表一五、ただし、全収入金額のうちの「その他の収入」は、宿泊又は休憩にかかる飲食物などの収入であり、宿泊又は休憩の収入区分が明らかでないので宿泊収入及び休憩収入の割合の計算に当たってはこれを除外した。)を各乗じてこれを算出した。

(2) ところで、原告の事業所が所属する渋谷旅館組合の組合長有賀千晴によると、同伴旅館一店舗当たりの利用客数の推移は同組合の組合員数の増減に比例していることが認められたので、昭和四六、四七事業年度の組合員数に対する本件係争各事業年度の組合数の割合をみると、別表一六記載のとおりとなるから、これに右同業種法人の昭和四六、四七事業年度の客室一室の一年間の平均利用回数の合計を乗じて、昭和四六、四七事業年度の右同業種法人の利用回数に基づく本件係争各事業年度の宿泊及び休憩の客室一室の一年間の利用回数及びその平均を求めた(別表一六)。

(3) 以上のとおり算出した昭和四六、四七事事年度の同業種法人を基礎とした原告の客室一室の一年間の平均利用回数と右1で述べた本件係争各事業年度の同業種法人を基礎とした原告の客室一室の一年間の平均利用回数とを比較すると、その差異は一〇パーセント程度で近似しており、(別表一一及び一六参照)、昭和三八事業年度にあっては前者が本件課税処分の基礎とした後者より若干下回るものの、他の年度はいずれも前者が本件課税処分の基礎とした後者より上回っており、このことは被告が原告の収入金額を算出するに当たり用いた本件係争各事業年度の同業種法人の客室一室当たりの一年間の平均利用回数は極めて妥当なものであることを示しているのである。

3  したがって、昭和三八年事業年度の更正は、少なくとも右所得金額の限度において正当というべきであり、同三九ないし同四二事業年度の各更正は、いずれも右各所得金額の範囲内である。

四  本件各決定について

原告は、前記一において述べたごとく本件係争各事業年度において収入金額を除外し、これをもって簿外普通預金及び簿外定期積金を設定するとともに、右簿外普通預金及び簿外定期積金の受取利息を収入として計上せず、さらに架空経費を計上して法人税額の計算の基礎となるべき事実を仮装し、隠ぺいして虚偽の法人税確定申告書を提出していたので、被告は国税通則法第六八条第一項の規定により重加算税の賦課決定をしたものである。

第五被告の主張に対する認否及び反論

一  被告の主張に対する認否

1  被告の主張一の事実について

1のうち、昭和四二事業年度の本館の利用客数等の調査及びその結果、昭和三九年の調査の際、「淤見広志」名義の定期積金(毎月の積立額一〇万円)を原告名義に変更したこと、青色申告書提出承認が取り消されたこと、被告主張の定期積金の存在並びに「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」名義の普通預金の存在は認める。原告名義に変更した定期積金は原告代表者個人のものであるところ、当時調査官が「これを法人所得であると認めればこれで調査を打切るから、この旨承認の念書に捺印されたい。」と勧誘し、原告代表者はわずらわしい調査を早く終了してもらいたいとの願いからやむなくこれに応じ、右調査官作成の念書に捺印するとともに、八千代信用に交渉して名義変更をしてもらったものである。被告主張の定期積金のうち、「新造加純」、「嶋崎はる」、」伊藤てる子」、「早坂せき」及び「淤見一秀」名義の定期積金は、それぞれ各名義人の所有に属し、他の定期積金及び前記三口の普通預金はいずれも原告代表者個人の所有に属する。

2は争う。

2  同二の事実について

(昭和三八事業年度)うち、確定申告所得金額及び未納事業税認定損は認めるが、その余はいずれも否認する。収入金計上洩れ及び受取利息計上洩れは、いずれも原告代表者個人に帰属するものである。

(昭和三九事業年度)のうち、修正申告所得金額及び「石川まさえ」、「淤見広」名義の普通預金の昭和三八年一二月から解約時同三九年五月末までの存在とその金額は認めるが、その余はいずれも否認する。右普通預金及び受取利息計上洩れは、いずれも原告代表者個人に帰属するものである。

(昭和四〇事業年度)のうち、修正申告所得金額、広告宣伝費中否認及び減価償却超過額は認めるが、その余はいずれも否認する。受取利息計上洩れはいずれも原告代表者に帰属するものである。

(昭和四一事業年度)のうち、確定申告所得金額、減価償却過額は認めるが、その余はいずれも否認する。受取利息計上洩れはいずれも原告代表者に帰属するものである。

(昭和四二事業年度)のうち、確定申告所得金額、減価償却超過額は認めるが、その余はいずれも否認する。受取利息計上洩れはいずれも原告代表者に帰属するものである。

3  同三の事実のうち、原告の客室数、各客室の一室当たりの宿泊料、休憩料及び被告主張の計算結果の数値並びに本件係争事業年度における原告申告の収入金額は認めるが、その余は不知又は争う。

二  原告の反論

1  被告の主張一について

被告が主張する普通預金等は、原告代表者個人に帰属するものであって、原告に帰属するものではない。以下、詳述する。

原告代表者は、その所有にかかる不動産を昭和三二年から同三六年にかけて別表一七記載のとおり売却し、合計二、四七七万円の代金収入を得た。これに対し、被告は、当時原告代表者は別表一八記載のとおり不動産を購入しているところ、右不動産売却代金はその購入資金にあてられていると主張するが、同表1の物件は、別表一七記載以外の物件を売却した売却代金をもって買い入れており、別表一八の2の物件は別表一七の5のとおり同額以上で佃に売却されており、別表一八の4の物件の買入代金一二〇万円と同表5の物件の改築費との合計三九〇万円は八千代信用からの借入金であり、同表6、7物件は昭和二五年に買入済みであるから、いずれも前記売却代金を費消したものではなく、無関係であることが明らかである。ただし、同表3の物件の買入代金六五万円は手元から捻出され、前記売却代金のうちから支出されたと推認されるから、前記売却代金から右六五万円を控除した二、四一二万円は、原告代表者個人に帰属する収入である。さらに、前記不動産売却収入を原資として行った街の金融による手形割引や受取利息等の収入、株式取引による収入、アパート賃貸収入、東京住宅復興株式会社の専務取締役としての役員報酬、賞与及び原告の代表取締役としての多額の報酬等(昭和四四事業年度で年間一八〇万円)も存在した。以上を合計すると、昭和三一年には八四九万六、六〇二円、同三二年には、一、二七九万六、二〇〇円、同三三年には六二四万三、五〇〇円、同三四年には八三五万五、一四〇円及び同三五年(三月一九日までの分)には一四一万四、〇九四円あり、その合計は三、七三〇万五三六円となる。

ところで、日本統計年鑑における昭和三一年から同三五年までの東京の勤労者世帯平均一箇月間の家計支出額(同三一年三万二、六〇三円、同三二年三万五、〇七四円、同三三年三万七、四〇一円、同三四年三万八、三二二円及び同三五年四万二、一四一円)を基礎として、同三一年一月一日から同三五年三月二〇日までの家計支出合計額を求めると一八三万一、九六四円となり、仮に原告代表者個人宅家計支出額がこれらの二倍と仮定して算出すると、三六六万三、九二八円となるから、前記入手金合計額を控除した三、三六四万一、六〇八円が同期間中の原告代表者個人の預金可能額となる。

原告代表者は、右預金可能額の大部分を各種金融機関に預金していたが、例えば八千代信用は預金獲得の成績をあげ、かつ、これらを課税対象から外すために小口の他人名義の預金に分解して預金されていた。また、定期預金及び定期の満期到来のときはその都度新規に同種預金等を設けて継続していた。前記不動産売却代金が預け入れ当時において小口に分解され、それが各種方法により小口に運用されていた以上、この運用から生ずる貸付利息、株式売買差益などが小口化されるのは自然であるし、他日の借入れの期待をもって金融機関の勧誘に応じ数多の定期積金の契約を締結していたとすれば、掛金に一致するよう小口化して預け入れ積み立てるのもまた当然の成り行きであるから、不動産売却代金であっても大口預金、定期預金に限られないのである。

ところで、被告の主張二によると「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」各名義の普通預金の合計入金額は三、四〇五万八、九六六円であり、そのうち原告の収入としたものの合計が一、一五九万五、一〇〇円、原告の収入としなかったものの合計が二、二四六万三、八六六円である。しかし、昭和三五年当時の原告代表者の預金可能額が前記のとおり約三、三六〇万円以上にして、それ以降の大口収入として別表一七の3の不動産売却代金七二〇万円が存し(昭和三五年以降の不動産購入はない。)、その合計額は約四、〇八〇万円となるうえ、前記預金可能額が昭和三一年一月一日以前の預金額を零と計算して出発している不合理さがあるから、この期首預金額を少なくとも三〇〇万円以上と想定すると、預金利息額を度外視し、かつ、その後の預金増加分と家計費支出とを同額とみてすら、少なくとも昭和三八年当時の原告代表者個人の預金額は約四、三八〇万円以上となり、被告発見の前記普通預金額約三、四〇〇万円をはるかに超えるのである。

2  被告の主張二について

被告が主張する主位的推計方法は、以下に述べるとおり原告の本件係争各事業年度の所得金額を算出する方法としては極めて不合理であり、したがって右推計を根拠とする本件各更正は違法である。

(一) 被告は、収入金計上洩れを算出する場合に、「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」名義の各普通預金のうち、特定の入金を抽出して収入洩れとしたというのであるところ、この抽出の具体的基準が不明確である。

(二) 昭和三九年六月から同年一一月までの収入洩れをそれ以前の収入洩れ実額から比例割合により推計した計算方式は、右期間の収入洩れがそれ以前の収入洩れと期間に応じた増加割合が同一であるという前提に立ってはじめて肯定されるものである。しかし、その期間内に原告は青色申告承認取消処分、調査、更正等を受けているのであるから、これらの事実発生の前後によって一般的には収入洩れの前記割合が変動すると推認するのが自然である。したがって、前記推計方法は不自然、不合理なものであり、被告もこの点を自覚したからこそ、昭和四〇事業年度以降の収入洩れの推計にはこの方法を利用してはいないのである。

(三) 被告が採用している主位的推計にかかる同業種法人は、その所在地、法人名が明らかにされていないから、原告は、反証を挙げるべき手段がない。したがって、右推計方法は、訴訟における当事者対等の原則及び信義則に反し許されない。

(四) 右同業種法人についての抽出基準によると、その各数値につき申告額の正確性についての判断を経たものかどうかが不明であり、その正確性に疑問がある。

(五) 被告は、右同業種法人につき立地条件、室内設備等の収入と密接に関連する要素について全く明示しないから、原告との類似性の主張、立証を欠くといわざるをえないうえ、原告は、次のように右各要素共低ランクに位置し、さらに直近に高級旅館が開店したため時代の推移に取り残され、別館は昭和四七年頃他に売却し(買主も同伴旅館業を一箇月程度営んだ後転業)、本館も同五二年一月廃業せざるをえなくなった。

(1) 立地条件は、本館、別館共に坂を上らないと来館できない位置にあるうえ、渋谷区内において同伴旅館業を営む場所としては、宇田川町付近、栄通り付近、宮益坂付近、道玄坂付近、丸山町から神泉にかけての付近の順でランクが下がるところ、原告の本館は道玄坂に、別館は宮益坂に所在する。

(2) 同伴旅館は、その客の目的からすると、駐車場があり、建物の外観、内部造作及び設備がいずれも優れ、部屋が広くて豪華なムードをかもし出し、かつ、料金も高い方が良質の客を多数引きつけうるところ、原告経営の旅館は、駐車場はなく、安普請で洋服ダンス等の設備もなく、部屋の広さも三畳と三畳(本館)又は三畳と四畳半(別館)を一部屋として使用している位でムードもないうえ料金も付近の同種旅館に比し低額である。

(3) 客は特定の時間帯に集中することが多いから、採算可能ラインとして少なくとも一〇室以上の客室数を有することが必要であるところ、本館(客室は九室)及び別館(客室は八室)は、いずれも右採算可能ライン未満である。しかるに、同業種法人五社の客室数は、いずれも右採算可能ライン以上であり、そのうち三社は別館の二倍以上の客室を有しており、類似性がない。なお、原告の本館は道玄坂に、別館は宮益坂に所在し、両者の間は徒歩で約一五分もかかるから互いに独立の旅館と考えるべきである。

(4) 宿泊に比し休憩の回数が多いと収入も増加するが、原告の客は勤務を終えてからの下級勤労者が多く、夕方からの入館に集中する傾向にあるから休憩の回転数は少ない。

3  被告主張三について

(一) 被告主張三における予備的推計は、次の理由によりその主張自体許されないものである。

すなわち、青色申告に対する更正には理由附記が要求されている(法人税法第一三〇条第二項等)ことを理由に、青色申告に対する更正の取消訴訟に限り処分理由の差換えを認めないとの主張が有力であるが、白色申告についての更正においても、これに対する異議申立てを棄却する場合には理由附記が要求されている(国税通則法第八四条第四項、第五項)から、訴訟の段階では青色申告に対する更正はもちろん、白色申告に対する更正も理由を附記された処分であり、両者を区別する理由はない。そもそも、右のように法が理由の附記を要求している理由は、手続的保障の見地から処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を示して不服申立てに便宜を与えることにあるが、理由の差換えを自由に認めると、理由附記を要求し、不服申立前置の制度を採用した法の趣旨の大半を失わせることになりかねないから、租税争訟の審理の対象ないし訴訟物は処分理由との関係における税額の適否であり、理由の差換えは原則として認められないと解するのが、法の趣旨に合致しているといえる。そして、被告の従前の推計方法である主位的推計方法は、他人名義の別口預金を原告の収入洩れと推認し、かつ類似同業者の一室当たりの平均売上げをもって推計するという方式であるのに対し、新推計方法である予備的推計方法は、客室一室の一年間の利用回数の平均回数という異例の数値を基礎とする方式であり、処分理由を異にするものであるから、予備的推計はその主張自体許されないといわなければならない。

(二) 仮に、右主張が許されるとしても、その推計方法は以下に述べるとおり極めて不合理なものである。

(1) 予備的推計にかかる同業種法人についても主位的推計にかかる同業種法人についての前記2(三)及び(五)の主張があてはまるうえ、特に予備的推計にかかる同業種法人は、一事業年度について一社、三社、零と極めて少なく、原告との類似性は厳格に要求されるべきであるからなおさらである。しかも、右同業種法人は、東京国税不服審判所から返還された関係書類中に含まれていた申告書に基づいて抽出されたものであるところ、右書類は、不服申立関係書類の疑いが濃厚であるから、その数値の確実性も信用できない。少数の同業種法人による場合には、実際に調査してその申告の確実性が担保されてはじめて適格性を獲得するというべきである。

(2) 被告は、右同業種法人の宿泊及び休憩の一年間の収入金額を算出するに当たり、当該法人の一年間の全収入金額に原告の昭和四〇事業年度における確定申告収入金額(飲食物収入も含む)中に宿泊収入金額及び休憩収入金額の占める割合を乗じているところ、同伴旅館の収入は、宿泊収入、休憩収入及び飲食物収入によって構成されているから、当該法人の全収入金額から飲食物収入金額を控除した金額に前記割合を乗ずるべきである。また、原告の前記割合も飲食物収入を無視して算出している点において妥当でない。さらに、被告は、原告の申告を信用できないとして否定するにもかかわらず、被告自身信用できないとする原告の申告に基づく数値により比例値を逆算する姿勢は、自己矛盾にして許されない。

なお、被告は、原告の全収入金額に占める飲食物収入の割合が同業種法人と同率であれば、原告主張の計算方法と被告主張の計算方法とは、その結果が同額となると主張するが、これは客筋に類似性がある場合に肯定しうる思考であり、設備、立地条件等の差異により水と茶ですます客が多い原告の客筋の場合にはあてはまらない。

(3) 被告は、昭和四〇事業年度につき同三九事業年度の数値を適用しているが、別表一一によれば昭和三八事業年度の合計平均利用回数は六八四・二回、同三九事業年度の合計平均利用回数は六〇九・五回となっており、また別表九によれば昭和四〇事業年度の前年に対する平均対比率をみると九六・五六パーセントとなっているから、昭和三八事業年度から同四〇事業年度までは利用回数が低下傾向にあったものと推計される。したがって、昭和四〇事業年度が同三九事業年度と同一とする被告の前記主張は不合理である。

(4) 被告は、女中の供述等を援用して予備的推計の正当性を主張するが、いずれも失当である。

まず、被告の調査当時女中は二名いたが、その職務は、客を部屋に案内すること、飲食物の運搬及び代金の受領といった程度にすぎず、女中が一日平均の客の利用回数や収入金額を認識し得たはずがなく、かつ、その供述はあいまいな記憶に基づくものであって、信用できない。

次に、昭和四六、四七年事業年度の同業種法人も立地条件等が不明であるうえ、客室等級区分のみをみても原告との類似性に欠けている。そして、右同業種法人の宿泊、休憩収入の配分率の算出に当たっては、「ホ」社、「ロ」社の全収入金額から飲食物収入を控除しており不合理である。さらに、右二社は、当該事業年度中最も収入が高いものであるから、右二社の配分率を他の同業者に適用すると、原告に著しく不利である。

さらに、渋谷旅館組合長は、組合員の収支関係の数値を把握できる立場にないから、利用客数と組合員数が比例するかどうかの判断自体が不可能である。そして、昭和四六、四七事業年度においては、「ロ」、「ニ」及び「ヘ」社はむしろ反比例の現象を示している。さらに、右比例法則によれば、昭和三八事業年度の利用回数は、同四一、四二事業年度の利用回数よりも下回っていなければならないはずなのに、被告が使用した本件係争事業年度の同業種法人の利用回数は、昭和三八事業年度よりも同四一、四二事業年度の方がかえって多いという矛盾した現象を示しているのである。

4  原告の客観的収入額の想定

原告の申告所得は、料理飲食等消費税収入日計表に日々記載した売上額に基づいて算出しているところ、本件係争各事業年度以降すなわち昭和四三事業年度以降現在までの各事業年度の申告についていまだに更正がないから、少なくとも更正の期間制限(三年ないし五年)を超えた分については税務署長も申告額を是認したものとうかがわれ、また、前記消費税については原告設立以降現在まで都知事は一度も更正をせず是認してきたものと考えられるから、少なくとも本件係争各事業年度中前記日計表の存在する年度以降については、収入額は日計表記載のとおり(そしてそれは原告の申告額と一致する。)と考えるのが妥当である。そして、それによれば昭和四二事業年度は一、四七三万二、七一〇円、同四三事業年度は一、四三九万一、四二四円、同四四事業年度は一、一六五万二、三七五円となる。

次に、前記日計表の存在しない昭和四二事業年度より以前について検討する。同三九事業年度については、原告の同四二事業年度に対するその収入比が、予備的推計にかかる同業種法人「D」社の同四二事業年度に対する同三九事業年度の収入比と同率と想定できるから、原告の同事業年度の収入想定額は、

<省略>

となる。次に、原告の昭和四一事業年度収入想定額であるが、適切な例がないので、右同四二事業年度と同三九事業年度の原告収入想定額の算術平均値と考えて計算すると、

(9,433,360+14,732,710)÷2=12,083,035(円)

となる。そして、同四〇事業年度収入想定額についても標本がないから高めに想定すれば、同四一事業年度と同額と考えられる。さらに、同三八事業年度収入想定額を考えると、原告の同四一事業年度に対する同三八事業年度の収入比を、予備的推計にかかる同業種法人「A」社の同四一事業年度に対する同三八事業年度の収入比と同じ割合として算出しうるから、原告の同事業年度収入想定額は、

<省略>

となるが、同事業年度は本館九室だけで別館七室は存在しなかったから、室数で按分すると、

<省略>

となる。そして、右本件係争各事業年度の収入想定額は、いずれも原告の申告額とほぼ一致しているか、低くなっているのである。

これら本件係争各事業年度の原告収入想定額は、昭和四三事業年度以降の各事業年度の確定した申告収入額とほぼ均衡がとれるものであるのに対し、被告主張の収入額を基礎にすると著しく高収入額の同四二事業年度の営業状況が、翌事業年度に、時に著しく不振をきたした特別の事情がなければならないことになる。しかし、この事情は何一つ顕出されないばかりか、かえって原告申告額の推移の如く、立地、営業条件の悪化(近隣に良質の同業者が誕生したので)が除々に現われてきたのである。

第六被告の再反論

一  原告の反論1について

1  原告代表者が、昭和三二年から同三六年にかけてその所有にかかる各不動産を売却し、代金を取得したと主張するが、右各不動産の不動産登記簿によれば別表一七記載のとおり同表1、2、4、5、8の各宅地及び同表4の建物の譲渡人は原告代表者ではなく、同表1、2、5、6、7、8の各建物はそれぞれ譲受人により保存登記がされ、同表1、2、6、8の各宅地の取得日も原告の主張する代金受領日とかなり差が存するほか、同表3の宅地の売却価額は原告の主張する七二〇万円ではなく二八八万円であるなど、原告代表者が原告主張どおりの不動産売却代金を取得したかどうか極めて疑わしい。

2  仮に、原告代表者が売却代金を取得したとしても、その当時同人は、同人、淤見マサエ及び斉藤サヨ名義で別表一八記載の不動産を取得していることが明らかであり、前記売却代金から右不動産を取得したものがあると推察され、不動産の売却代金を八千代信用金庫に預金したという原告の主張は、にわかに措信しがたい。

3  右不動産売却代金を含めた原告代表者の各収入について、同人は当時所得税の申告をしていないし、同人の単なる記憶に基づくものもあることなどから、果して右各収入が現実に存在したのかどうかさえも不明であり、また仮に存在したとしても、それが本件簿外普通預金とどういう形で結びつくのか全く明らかでないから、その主張自体失当である。仮に、右各収入が存在したならば、原告代表者が昭和三四年九月二五日の時点で八千代信用から三九〇万円も高額の利息を払ってまで借り入れること自体が不自然である。

二  原告の反論2について

1  原告の反論2(二)について

収入除外をしている納税者が調査、更正等を受けても、動かぬ証拠を把握されて争うことを断念した場合ならば格別、あくまでも争おうとするときには、係争事業年度の申告額を真実らしく見せるため、その後においても作為を弄するのがむしろ通常である。

2  同2(三)について

被告は、国家公務員法の規定によるほか、各税法の規定(例えば法人税法第一六三条)により職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない義務を負わされている。そして、事業を営む者にとって自己の年間の収入金額等を公開されることは、他の同業者に事業規模、経営方針を開示することになり、事業経営上支障を生ずる恐れが多分にある。したがって、被告が使用した同業種法人の法人名、住所等を明らかにすることは、職務上知り得た特定の法人の営業上の秘密を漏らすことになるのでこれに応ずることはできない。

3  同2(五)について

(一) 原告が別館を売却した昭和四七年は、本件係争各事業年度における渉谷旅館組合の組合員数が一四五名前後であるのに対し、昭和四七事業年度における同組合の組合員数が一二一名と減少しているとおり、同伴旅館の業況が著しく不況の年であったところ、原告は、同年一二月、不動産賃貸業に一部転業するため、新宿区三光町三四番地上に地上一〇階建の鉄筋ビルを一億一、七五〇万円で建築しており、その資金捻出のために別館を一億一、〇〇〇万円で売却したものであると推認されるのであり、別館の売却は本件係争各事業年度における営業不振によるものではない。

なお、本館を廃業したのは、本件係争各事業年度の一〇年以上も後の昭和五二年であり、廃業の理由が本件係争各事業年度の営業状態に関連しているとは認められない。

(二) 立地条件については、渋谷区内は一般に坂が多く、宇田川町内付近も坂を上っていく状態に位置しており、原告の本館及び別館が特に不利な位置にあったとは認められない。

(三) 室内設備、客筋、料金額等についても、一般に利用客は自己の好みに応じた客室と一室当たりの料金の兼ね合いで取捨選択し利用するであろうと考えられる。したがって、仮に原告の本館及び別館の室内設備等が原告主張のとおりだとしても、客室利用回数が同業種法人より下回るという断定はできない。このことは、予備的推計にかかる昭和三九事業年度、同四六、四七各事業年度の各同業種法人を比較対照しても、一室当たりの平均単価が高い法人の客室利用回数が必ずしも多いとは限らないことからみても明らかである。

(四) 室数についても、予備的推計にかかる昭和三九事業年度、同四六、四七各事業年度の各同業種法人の客室数と客室利用回数とを比較対照してみると、同伴旅館における客室数の多寡は、必ずしも客室利用回数に影響を与えていないことが明らかである。

(五) 宿泊収入と休憩収入の割合についても、予備的推計において使用した原告と「ホ」社、「ロ」社の各割合とは近似しており、原告の休憩収入が同業種法人に比較して著しく下回るとは認められない。

三  原告の反論3について

1  原告の反論3(一)について

課税庁の行う課税処分は、客観的、抽象的には既に成立している租税債務を確認し、それを具体的に確定させるための一つの方法にすぎないから、実際の課税標準又は税額等の認定根拠は単なる攻撃防禦方法にすぎず、時機に遅れた攻撃防禦方法の規定その他法律の要請に違反しない限り、その主張を変更することも許されるものである。

2  同3(二)(1)について

前記二2、3と同旨

3  同3(二)(2)について

原告及び同業種法人の双方において飲食物収入が明らかでないため、原告主張の計算方法によることが困難であり、しかも、原告の全収入金額に占める飲食物収入の割合が同業種法人と同率であるとした場合、原告主張の計算方法によっても、被告主張の計算方法によっても、その結果求められる全収入金額は同額となる。なお、原告の昭和四〇事業年度における当初申告収入金額のうちにおいて宿泊収入金額及び休憩収入金額の占める割合の算出に当たっては、宿泊、休憩収入にかかる飲食物収入は宿泊収入と休憩収入にそれぞれ同率の割合で収入するものとして計算した。また、一般に同伴旅館業者が収入金の脱漏を図るときは、全収入金額に占める宿泊収入と休憩収入との構成割合を重要視し、右割合が不均衡とならないよう宿泊又は休憩の双方の収入を除外するものと推定するのが合理的である。けだし、さもないと、その収入内容が一見して同伴旅館の実態を反映しない不自然なものとなってしまうからである。このことは、被告が使用した原告と「ホ」社、「ロ」社の全収入金額に占める宿泊及び休憩収入金額のそれぞれの割合が近似していることからもうかがわれる。

4  同3(二)(3)に対して

予備的推計にかかる同業種法人の昭和三九事業年度の合計平均利用回数に対する同四一事業年度の合計平均利用回数の割合は一〇三・一パーセントとなるのに対し、昭和四六、四七事業年度の同業種法人に基づく昭和三九事業年度の合計平均利用回数に対する同四一事業年度の合計平均利用回数の割合は一〇五・八パーセントとなり、その割合は両者とも近似している。そして、後者の昭和三九事業年度の合計平均利用回数に対する同四〇事業年度の合計平均利用回数の割合は一〇〇・九パーセントとなる。したがって、前者の昭和四〇事業年度の客室利用回数は、同三九事業年度と同程度であると推認したものである。

5  同3(二)(4)について

まず、原告の本館の客室数は九室であり、女中も二名と少ないのであるから、女中の職務内容が原告主張のとおりであったとしても、客室に出入りした客の組数及び一日当たりの収入金額程度のことは容易に把握し得る状態であったと推察できる。

次に、渋谷旅館組合長は、同人自身で同伴旅館を経営し、かつ、全国旅館環境衛生同業組合副理事長の要職にあり、同伴旅館業界の景況に最も精通しているのである。また、一般に事業経営者は景気の好不況に敏感で、同伴旅館業の場合も景気が良くもうかるとわかれば新規開業者が増加し、反面、景気が悪く欠損が生ずるとなれば廃業する者が多くなることは当然であるから、組合長の判断も容易に首肯し得るところである。

第七証拠

一  原告

1  甲第一号証の一、同号証の二の一、二、同号証の三、第二号証の一、同号証の二の一、二、同号証の三、第三号証の一、二、同号証の三の一、二、同号証の四、第四号証の一、同号証の二の一、二、第五、第六号証の各一、二、第七号証の一、二の各一、二、第八、第九号証の各一、二、第一〇号証の一、同号証の二の一、二、同号証の三、第一一号証の一、二、同号証の三の一、二、同号証の四、第一二ないし第二〇号証の各一ないし四、第二一号証、第二二ないし第二四号証の各一ないし二四、第二五号証の一ないし三三、第二六号証、第二七号証の一ないし九六、第二八号証の一ないし七一、第二九号証の一ないし九五、第三〇号証の一ないし四八、第三一号証の一ないし八、第三二号証の一ないし一四、第三四号証の一ないし六、第三五、第三六号証の各一ないし五、第三七号証の一ないし三、第三八号証、第三九号証の一、二及び第四〇号証の一ないし三

2  原告代表者

3  乙第一号証、第一九、第二〇号証、第二一号証の一ないし三及び第二二号証の成立(第一九、第二〇号証及び第二二号証については原本の存在を含む)を認める。その余の乙号各証の成立(第七号証の一ないし七、第八号証の一、二、第九ないし第一一号証、第一二号証の一、二及び第一三号証については原本の存在を含む)は知らない。

二  被告

1  乙第一、第二号証、第三号証の一ないし三、第四号証の一、二、第五号証の一ないし三、第六号証、第七号証の一ないし七、第八号証の一、二、第九ないし第一一号証、第一二号証の一、二、第一三、第一四号証、第一五号証の一ないし四、第一六ないし第一八号証の各一、二、第一九、第二〇号証、第二一号証の一ないし三及び第二二号証

2  証人飯干榮間、同畠中幸吉、同内藤芳美、同鶴岡政治、同和田清及び同大山雅登

3  甲第一号証の二の一、二、同号証の三、第二号証の二の一、二、同号証の三、第三号証の三の一、同号証の四、第四号証の一、同号証の二の一、二、第五、第六号証の各一、二、第七号証の一、二の各一、二、第八号証の一、二、第九号証の二、第一〇号証の二の二、第一一号証の三の一、二、第一二ないし第一六号証の各一ないし四、第一七号証の一、二、四、第一八ないし第二〇号証の各一ないし四及び第四〇号証の一ないし三の成立(第四〇号証の一ないし三については原本の存在を含む)を認める。第三号証の三の二、第一〇号証の二の二及び第一一号証の四のうち、各官公署作業部分の成立を認めるが、その余の部分の成立は知らない。その余の甲号各証の成立(第一号証の一及び第三号証の二については原本の存在を含む)は知らない。

理由

一  請求原因一の事実は当事者に争いがない。

二  そこで、被告主張の課税根拠について判断する。

1  収入除外の事実と推計の必要性

被告主張一の事実のうち、原告は昭和三八事業年度以降の青色申告書提出承認を取り消されていること、昭和三八事業年度に関する同三九年の調査の際「淤見広志」名義の定期積金(毎月の積立額一〇万円)を原告名義に変更したこと並びに被告主張の定期積金及び普通預金の存在については、当事者間に争いがない。

成立に争いのない乙第一号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一九号証及び第二二号証、原告代表者尋問の結果により成立を認めうる甲第三九号証の一、二、証人飯干榮間の証言により成立(乙第三号証の一、二を除き原本の存在を含む。)を認めうる乙第三号証の一(ただし、後記採用しない部分を除く)、二、第八号証の一、二、第九ないし第一一号証、第一二号証の一、二、証人飯干榮間、同畠中幸吉、同鶴岡政治、同大山雅登の各証言、原告代表者尋問の結果(ただし、証人飯干榮間の証言及び原告代表者尋問の結果中後記採用しない部分を除く。)及び前記当事者に争いがない事実を総合すれば次の事実を認めることができる。すなわち、まず八千代信用に設定されていた「岩田とき」、「石川まさえ」及び「淤見広」(二口)名義の各普通預金(以下、一括する場合は「本件簿外普通預金」という。)口座には、別表六、七記載のとおり(ただし、別表七3(2)中三九年三月二四日、一四万九、〇〇〇円とあるのは同月二五日の、同年四月二六日、五〇〇円とあるのは同月二八日の誤りと思われる。)頻繁に入金がされている。そして、「岩田とき」名義の普通預金は昭和三八年三月五日に解約されている(解約時の残金六四万八、九九八円)が、同日新設された「石川まさえ」名義の普通預金に右残金と同額の入金があり、同預金も同三九年三月三日に解約されている(解約時の残金二三万三、八九八円)が、同日「淤見広」名義の普通預金(口座番号三二四七)に右残金と同額の入金があり、さらに、同預金も同年五月一四日に解約されている(解約時の残金四二万八、七一五円)が、同日新設された同名義の普通預金(口座番号七四七一)に右残金と同額の入金があった(同預金も同月二二日に解約されている。)。次に、昭和三八年一月二八日付で原告名義の定期預金二口(内一口は同三九年に名義が変更されたもの。)ほか一二口の定期積金が積み立てられていた(合計七四万六、〇一〇円)ところ、同日付で「岩田とき」名義の普通預金から右同額の払戻しがあった(しかしながら、被告主張中、昭和三七年一二月、同三八年二月ないし四月、七月ないし九月及び同三九年五月は、定期積金の入金日よりも被告が右入金に相当する払戻金であると主張していると思われる本件簿外普通預金からの払戻金の払戻日の方が遅く、少なくとも前期各月においては、直接本件簿外普通預金の払戻金が定期積金に入金されたものではないことが認められる。)。また、同三八年一一月五日付で「石川まさえ」名義の普通預金から三二万三、五五〇円が払い戻されているところ、同日付で原告の八千代信用に対する借入金の利息として右同額が返済されている。さらに、同年九月二〇日から同三九年四月三〇日までの期間中にされた原告の八千代信用における当座預金への入金のうち、多くの入金(入金総数四〇回のうち、昭和三八年一一月一九日の二回、同年一二月三日、同三九年二月一二日、一九日、二四日、二七日、二九日及び三月三日の各一回、合計九回を除く三一回)には、「石川まさえ」又は「淤見広」名義の普通預金中にその入金日と同日付でかつ、入金された金額に相当する金額の払戻しが存する。一方、原告には昭和三八年から同四二年位の間、八千代信用から別館取得資金等として三、〇〇〇万円を超える借入れがあったところ、その担保として内田信也名義ほか六口の定期積金(前記昭和三八年一月二八日に積み立てられた一四口の定期積金の一部。)等が供されていた。そして、八千代信用において右金額の貸付けに際し原告からの申立てに基づいて作成したりん議書には、原告は毎月一〇〇万円程度の収入があるが、表面上は税務対策上約四〇パーセント強の収入除外を行っている旨の記載がされていた。また、原告は、昭和三八事業年度についての当初更正の調査の際被告所部係官から伝票と現金残高の金額に相違があるとの指摘を受け、同三九年五月二一日付で、被告あてに、同三七年七月から売上金額の一部を除外して八千代信用に「淤見広志」名義の定期積金を行っていたことを認めるとともに寛大な処置を願う旨の念書を提出し、右定期積金(毎月の積立額一〇万円)の名義を急きよ原告名義に変更していた(右名義変更の事実は当事者間に争いがない。)。さらに、前記「淤見広」名義の普通預金(口座番号七四七一)が解約された昭和三九年五月二二日は、右念書を提出した翌日である。以上の事実を認めることができる。前掲乙第三号証の一、証人飯干榮間の証言及び原告代表者尋問の結果のうち右認定に反する部分は採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。よって、本件簿外普通預金は、その解約時に残金が他の普通預金に入金されたものと推認されるから、右普通預金はすべてその預金者を共通にすると認められる。そして、本件簿外普通預金には頻繁な入金がある一方、右普通預金からの払戻金をもって原告名義の定期積金(その中には、被告に対して売上を除外して行っていたことを認めた定期積金も含まれている。)や当座預金への入金、原告の借入金に対する利息の返済がされていると推認されるし、原告自身、被告及び金融機関に対し収入除外して定期積金を行っていることを認めていることなどを総合すると、本件簿外普通預金への入金中には原告が収入を除外してした入金が含まれていると認められる。

ところで、原告は、被告の主張する本件簿外普通預金及び定期積金は原告に帰属するものではなく、定期積金の一部(これは名義人自身に帰属する。)を除き、他は原告代表者が昭和三六年までに不動産の売却や賃貸、街の金融及び株式取引等によって得た収入合計四、三八〇万円以上を小口に分割、運用して継続してきた預金である旨主張する。

右のうち、不動産売却代金については、成立に争いのない甲第一、第二号証の各二の一、二、第一、第二号証の各三、第三号証の三の一、同号証の四、第四号証の一、同号証の二の一、二、第五、第六号証の各一、二、第七号証の一、二の各一、二、第八号証の一、二、第九号証の二、第一〇号証の二の一、第一一号証の三の一、二、原告代表者尋問の結果により成立(ただし、甲第一号証の一及び第三号証の二については原本の存在を含む。)を認めうる甲第一、第二号証の各一、第三号証の一、二、第九、第一〇号証の各一、第一一号証の一、二、第二六号証、第二八号証の一ないし四八、第三一号証の一ないし八、官公署作成部分の成立は争いがなく原告代表者尋問の結果によりその余の部分の成立を認めうる甲第三号証の三の二、第一〇号証の二の二、第一一号証の四及び右尋問の結果を総合すれば、次の事実を認めることができる。すなわち、別表一七記載の各不動産は、いずれもかつて原告代表者が所有していたところ、ほぼ原告主張の時期に売却し、二、〇〇〇万円を超える売却代金を取得した。しかしながら、同表6、7の不動産を売却した代金で同表4、5の不動産を購入しているほか、同表記載の各不動産中、3記載の土地についてはさておくとしても、他はいずれも仮登記の記載等からすると昭和三一年から同三四年にかけて原告代表が購入したものであって、同表1、2、6、7、8記載の各不動産は取得から売却までの期間がおおよそ五箇月から一年、同表4、5記載の各不動産も二年には満たない期間しか保有しておらず、右各不動産の売却によって原告代表者が取得したのは右期間の値上がり等による転売利益のみであると推認される。さらに、右以外にも昭和三四年八月には別表一八3、4記載の土地、建物(本館)を購入している(代金合計一八五万円)し、同三五年には同建物を改築(料亭の造りから同伴旅館の造りに)している。以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定の事実によれば、前記不動産売却代金のうち相当部分は他の不動産の取得資金等にあてられており、転売利益があったとしても本件簿外普通預金への入金総額には到底匹敵しえない金額と推認される。なお、原告は、不動産の取得、改築の資金は借入金によっているから前記不動産売却代金は費消されていないと主張し、原告代表者尋問の結果により成立を認めうる甲第一〇号証の三によれば、原告代表者は昭和三四年九月二五日に八千代信用から土地購入資金として三九〇万円を借り入れている事実を認めることができるが、右書証によれば、右借入金は昭和三七年一月一六日に完済されていることが認められ、預金可能金額の算出に当たり右返済金を控除している事実を認めるに足りる証拠がない以上、結局、右借入金に相当する金額は預金可能金額から減算されるべきであり、原告主張は失当である。

次に、原告主張のうち不動産売却代金以外の収入については、原告は、その算出の主たる根拠を前掲甲第二六号証(原告代表者作成の個人収入一覧表、以下「一覧表」という。)に求めているところ、原告代表者尋問の結果によれば、右一覧表は原告代表者の日記(前掲甲第二八号証の一ないし七一、第三〇号証の一ないし四八、第三一号証の一ないし八及び甲第二七号証の一ないし九六、第二九号証の一ないし九五、第三二号証の一ないし一四、以下「日記」という。)の記載等と記憶に基づいて作成されたものであることが認められるが、一覧表記載の金額につき日記に受領金額の記載まであるのはむしろ少数で、日記には金銭の授受自体の記載もないのが少なからず存するうえ、日記記載の金額でも一覧表には漏れていたり、原告代表者の記憶自体もその正確性に疑問があり、右一覧表はただちに措信しがたい。なお、日記によれば、原告代表者にある程度の収入があったことをうかがわせるが、断片的であるうえ明確な記載が少なく、原告主張を認めるに足りるものではない。また、原告代表者尋問の結果は採用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

以上によれば、原告が主張する原告代表者の個人収入の大部分はこれを認めるに足りる証拠がないといわざるをえず、仮に原告代表者にある程度の預金(又は預金可能額)が存したとしても、その預金が小口に運用されながら継続され本件簿外普通預金となったことを認めるに足りる証拠はない。

以上によれば、原告は、本件係争各事業年度につき青色申告書提出の承認を取り消され、売上金をすべて帳簿上に記載することなく他人名義の預金に預け入れしているのであるから、推計の必要性があるといわざるをえない。

2  次に被告の主位的主張について検討する。

(一)  昭和三八ないし同四二事業年度における確定申告所得金額又は修正申告所得金額、同三八事業年度における未納事業税認定損、同四〇事業年度における広告宣伝費中否認、同四〇ないし同四二事業年度における減価償却超過額については、当事者間に争いがない。

(二)  収入金計上洩れについて

前記認定のように、本件簿外普通預金に原告の売上金が入金されているところ、被告は、本件簿外普通預金の入金総額から原告の営業収入であることが必ずしも明確でない<1>小切手による入金、<2>入金経路が明確である借入金、振替、定期預金及び利息の入金、<3>一回の入金額の特に多額のもの及び入金間隔の特に接近しているもの等を控除して原告の収入金計上洩れを算出する方法を主張するが、同伴旅館という原告の業種の収入の性質からみて右<1>、<2>の各金額を控除することは妥当であると考えられるから、結局、右<3>の金額の算出方法が合理的である限り、右収入金計上洩れの算出方法は合理的なものであると認められる。

前掲証人飯干榮間の証言によれば、東京国税不服審判所所部係官飯干榮間は、右<3>の金額を抽出する具体的基準として、「一回の入金額が三〇万円以上のもの、一日に二度又は二日続けて入金されている場合にはその一方を除く。」との具体的基準を設定したこと、右基準を設定した理由は、原告の規模からみて毎日の売上げが三〇万円以上にもなることは考えにくいし、一日の売上げをわざわざ二回に分けたり、二日続けて入金するということはないだろうと考えられたためであること、そして同係官は、前記<1>、<2>及び右の基準を基に本件簿外普通預金への入金額から右各基準に該当する入金額を別表七記載のとおり控除して原告の収入金計上洩れ金額を別表六記載のとおり抽出したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

しかしながら、別表六によれば昭和三八年一〇月二五日、二六日と連続した入金を収入金計上洩れと認めていること、同三九年四月二四日の四万三〇〇〇円の入金は、前掲乙第一一号証によれば他店券による入金であることが認められるなど前記各基準に基づく抽出作業自体の正確性に疑問が残るうえ、右<3>の基準について検討してみると、昭和三八事業年度における原告の本館の客室数は九室で、宿泊料金は六室が二、〇〇〇円、三室が一、〇〇〇円、休憩料金は六室が一、五〇〇円、三室が八〇〇円であることは当事者間に争いがないから、仮に全客室に宿泊及び休憩(一回、なお、後述の被告が援用する予備的推計にかかる同業者の最高値も約一回である。)があったとしても、一日の収入は宿泊収入が一万五、〇〇〇円、休憩収入が一万一、四〇〇円で合計二万六、四〇〇円、二日分を合計してみても五万二、八〇〇円にしかならないことからすれば、一回当たりの入金額の最高限度を三〇万円としたことについては本訴にあらわれた全証拠によるもその合理的根拠を見出すことができないといわざるをえない。なお、昭和三九年一月二二日に別館が開業していること、その室数は八室で宿泊料金は六室が二、八五〇円、一室が二、四〇〇円、一室が二、〇〇〇円、休憩料金は六室が一、七五〇円、一室が一、六〇〇円、一室が一、四〇〇円であることは当事者間に争いがないが、前記同様に全客室に宿泊及び休憩(一回)があったとしても、別館の一日の収入は宿泊収入が二万一、五〇〇円、休憩収入が一万三、五〇〇円で合計三万五、〇〇〇円、本館と合計しても一日の収入は六万一、四〇〇円、二日分を合計しても一二万二、八〇〇円にしかならないから、別館開業後をとってみても前記基準の合理的根拠を見出すことができないといわざるをえない。そして、本訴にあらわれた全証拠を検討してみても、本件簿外普通預金への入金額から原告の収入除外による入金と推認しうる金額を抽出する合理的手法はこれを見出すことができないといわなければならない。そうすると、被告主張の収入金計上洩れ金額の算出方法は、他の点について検討するまでもなく合理性を欠くといわなければならないし、昭和三九事業年度以降についても前事業年度の収入金計上洩れ金額を前提とする推計方法であるから、結局これまた合理性を欠くといわなければならない。

(三)  受取利息計上洩れについて

本件係争各事業年度を通じて、被告主張の受取利息計上洩れは、本件簿外普通預金及び被告主張の定期積金等がすべて原告に帰属する預金であることを前提にしているところ、本訴にあらわれた全証拠によるも本件簿外普通預金がすべて原告に帰属する預金であることの事実を認めるには足りないし、いわんやその余の定期積金、定期預金等は前記認定にかかる一部の入金を除き、本件簿外普通預金との結びつきすら認めるに足りる証拠がなく、結局前記被告の主張は、その前提を欠き、失当といわなければならない。そして、本訴にあらわれた全拠を検討してみても、本件簿外普通預金等から原告の預金と推認しうる金額を抽出する合理的手法はこれを見出すことができない。

(四)  昭和四〇事業年度における雑費中否認について

前掲証人畠中幸吉の証言によれば、被告の所部係官畠中幸吉は、原告が昭和四〇事業年度において未払金(雑費)に計上しているエスロン害虫消毒本社に対する二、〇〇〇円について、同社において帳簿を確認したところ、支払残はなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠もないから、前記取引はなかったものと認めるのが相当である。

(五)  昭和四一事業年度における修善費中否認について

証人畠中幸吉の証言により成立を認めうる乙第一五号証の一ないし四及び同証言によれば、被告所部係官畠中幸吉は原告が昭和四一事業年度において未払金(修繕費)に計上している双葉電機商会に対する一万四、五四〇円及び大成温調に対する三、九〇〇円について、右両者において帳簿を確認したところ支払残はなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠もないから、前記各取引はなかったと認めるのが相当である。

(六)  昭和四二事業年度における営業費中否認について

成立に争いのない乙第二一号証の一ないし三、証人畠中幸吉の証言により成立を認めうる乙第一四号証、第一六ないし第一八号証の各一、二及び同証言によれば、被告所部係官畠中幸吉は、原告が昭和四二事業年度において未払金(修繕費)に計上している村野昭吾に対する四万八、二七五円、近藤工業所に対する四万二、六六〇円、浮田塗装工業に対する一〇万二、四六〇円、未払金(広告費)に計上している三栄社に対する三二万円中の一二万円、未払金(雑費)に計上している志賀ふとん店に対する一万九、五〇〇円中八、〇〇〇円について、それぞれ右取引先において帳簿等を確認したところ、いずれも支払残がなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠もないから、前記各取引はなかったと認めるのが相当である。

3  そこで、被告の予備的主張について検討する。

(一)  原告は、白色申告についての更正においても、これに対する異議申立てを棄却する場合には理由附記が要求されているから、訴訟の段階では白色申告に対する更正も理由を附記された処分であり、理由の差換えを自由に認めると理由附記を要求し、不服申立前置の制度を採用した法の趣旨の大半を失わせるところ、被告の予備的主張は、主位的主張とその基礎及び処分理由を異にするから、主張自体許されない旨主張する。

しかしながら、一般に課税処分取消訴訟において実体上の違法が争われている場合には、当該課税処分の違法性の有無は、右処分によって認定された課税標準又は税額が右処分時における客観的な課税標準又は税額を超えているか否かによってのみ決せられるべきものと解すべきであり、白色申告に対する更正については理由の附記を要求する規定も存しないから、右更正に対する取消訴訟においては、特段攻撃防禦方法の制限が問題となることなく、課税標準又は税額の計算の基礎となる事実については、口頭弁論終結に至るまで原則として随時提出しうるというべきである。けだし、異議決定書等に附記された理由は、異議審理庁等の原処分に対する判断の理由を明らかにするにとどまるものであり、それによって処分の理由についての附記がない原処分の取消訴訟において、原処分庁が右異議審理庁等の附記した理由以外の攻撃防禦方法を主張することが制限されると解すべき理由はないからである。そして、原告が昭和三九年六月一八日に同三八事業年度以降の青色申告書提出承認を取り消されたことは当事者間に争いがないのであるから、原告の前主張はとりえない。

(二)  次に、予備的推計の合理性について検討する。

(1) 証人内藤芳美の証言により成立を認めうる乙第四号証の一、二、第五号証の一ないし三並びに同証言、前掲証人飯干榮間及び同和田清の各証言を総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち、東京国税局長は、昭和五一年四月一日付けで被告に対し、渋谷税務署管内で同伴旅館を営む法人のうち、その事業年度が昭和三七年一二月一日から同四二年一一月三〇日までの間に終了する各事業年度を含む法人で、宿泊又は休憩の用に供している部屋数が四部屋から一八部屋までのもので、かつ、一部屋当たりの宿泊、休憩料金が明らかなもの(ただし、<1>更正等の処分を行ったもので国税通則法の規定に基づく不服申立期間又は出訴期間の経過していないもの及び当該処分に対して不服申立て又は提訴がされて現在審理中のもの、<2>推計により所得金額を認定したもの、<3>他の事業を兼業していて兼業の売上金額が区分計算できないもの、<4>災害等により経営状態が異常なものを除く。)の右各事業年度の売上(収入)金額(対象法人の損益計算書、確定申告書(修正申告書を含む。)及び法人税決議書に基づき、最終課税事績の金額を記入する。)、一部屋当たりの宿泊料金及び休憩料金(法人の事業概況説明書又は法人税調査事績に基づいて等級区分ごとの部屋数及び一部屋当たりの使用料金を記載する。)を報告するよう求めた。これに対する被告の調査結果によれば、右各条件に該当した法人は、原告の昭和三八事業年度にかかるものとして別表一一記載の同業者記号「A」、同三九事業年度にかかるものとして同「B」、「C」、「D」、同四一事業年度にかかるものとして同「A」、同四二事業年度にかかるものとして同「D」があり(同四〇事業年度は零であった。)、その事業年度、売上(収入)金額、等級区分ごとの部屋数及び一部屋当たりの宿泊料金、休憩料金は、別表一一の各欄記載のとおりである。なお、東京国税局長が報告を求めた時点においては、申告期限から五年間の保存期間を経過しており、本件の審査請求において国税不服審判所で使用し返却された関係書類中に含まれていた五社(本訴の主位的推計にかかる同業種法人)の申告書しかなく、右のうちから前記条件に合致するものを抽出した。また、右主位的推計にかかる同業種法人は、東京国税不服審判所所部係官飯干榮間が昭和四七年一二月一五日渋谷税務署において原告と同業を営む法人の関係資料等を調査し、同税務署管内で同伴旅館を営む青色申告法人のうち、原告とその規模(室数及び料金、ただし、原告の室数は本館と別館を合算した。)がおおむね類似するものとの抽出基準により抽出したものである。さらにその後、東京国税局長は、昭和五一年九月二七日付で被告に対し、前記同年四月一日付の通達における抽出基準のうち、事業年度を昭和四六年一月一日から同四七年一二月三一日までの間に終了する各事業年度に、部屋数を四部屋から二〇部屋に変更するほか同一の基準に該当する法人で、報告事項のうち、売上(収入)金額を売上(収入)金額の内訳(宿泊収入、休憩収入、その他の収入及び合計収入、ただし、内訳が明らかでない場合は合計収入だけ記載する。)まで記載(対象法人の確定申告書(修正申告書を含む。)、損益計算書、法人税決議書、法人の事業概況説明書及び法人税調査事績に基づいて最終課税事績の金額を記入する。)するよう変更するほか同一の事項につき報告するよう求めた。これに対する被告の調査結果によれば、右の各条件に該当した法人は、事業年度が昭和四六年中に終了するものは別表一三記載の同業者記号「イ」、「ロ」、「ニ」、「ホ」、「ヘ」、同四七年中に終了するものは別表一四記載の同業者記号「イ」、「ロ」、「ハ」、「ニ」、「ヘ」であり、売上(収入)金額、その内訳、等級区分ごとの部屋数及び一部屋当たりの宿泊料金、休憩料金は、昭和四六年事業年度については別表一三、同四七事業年度については別表一四の各欄記載(ただし、売上(収入)金額の内訳について判明したものは昭和四六事業年度の同業者記号「ホ」及び同四七事業年度の同「ロ」のみであり、その内訳は別表一五の各欄記載)のとおりである。以上の事実を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、予備的推計にかかる同業種法人の数は極めて僅かであるところ、その抽出作業は、渋谷税務署管内における全法人に対してその抽出基準を適用したものではなく、主位的推計にかかる同業種法人五社に対して適用したにすぎないものである。この点につき、被告は、予備的推計にかかる同業種法人の抽出作業は昭和五一年四月になされたが、本件係争各事業年度から長年月経過していたため主位的推計にかかる同業種法人の申告書しか残されていなかったためである旨主張する。しかしながら、そのような資料収集の遅れをもって、抽出対象者がごく限定されたことを正当化することはできないというほかない。結局、主位的推計にかかる同業法人の抽出の合理性が問題であるところ、その抽出基準は、原告と規模(部屋数及び料金)がおおむね類似するというあいまいなもので、部屋数は原告の本館(九室)と別館(八室)の合計(一七室)をもって基準としており、予備的推計にかかる同業種法人についての「四室以上」との抽出基準を一部空洞化している疑いがある。さらに、右主位的推計にかかる同業種法人の抽出自体が昭和四七年一二月一五日になされたが、本件係争各事業年度中そのほとんどはすでに申告期限から五年間の保存期間を経過しており、当時すでに一部の申告書は保存期間経過により廃棄されていた疑いも強く、その抽出過程に疑問がある(前掲証人和田清の証言により成立を認めうる乙第六号証、同証言及び原告代表者尋問の結果によれば、渋谷税務署管内の同伴旅館の数は、本件係争各事業年度よりも昭和四六、四七年の方が少なくなっていることが認められるが、昭和四六年、四七事業年度にかかる同業種法人でも各五社(そのうち、昭和四六事業年度にかかる同業法人一社は、予備的推計にかかる同業法人の抽出基準に該当しない。)が抽出されている。)。

また、一般に、同業者の平均値をもって推計する場合における同業者数は、同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異を捨象し、資料に客観性を与えるに足る数が必要であって、仮に同業者数が一件又はそれに近い数しかない場合には、それだからといってただちに推計の合理性を欠くとはいえないにしても、個別的な差異が平均化されていないとみざるをえないことが多いから、当該納税者との類似性がある程度具体的に認められてはじめてその合理性を主張しうるというべきである。そして、本件においては、抽出された同業種法人の数は五事業年度において四社六事業年度にすぎず極めて少ないといわざるを得ない。そのうえ、右同業者中「B」社、「D」社の事業年度は被告が主張する原告の事業年度とわずかに三箇月しか重なる月がなく、むしろ、右二社については被告が主張する原告の事業年度の前事業年度にあてはめるべきである。そうすると、予備的推計にかかる同業種法人は、昭和三八事業年度「A」社、「B」社、「D」社、同三九事業年度「C」社、同四一事業年度「A」社、「D」社、同四〇事業年度、四二事業年度共に零となり、同業種法人の数は昭和三八事業年度から順に、三社、一社、零、二社、零となる。以上によれば、昭和三九年事業年度においてはもちろんのこと、同四一事業年度あるいは同三八事業年度においてもある程度具体的な類似性を必要とすると解すべきである。

これを本件の抽出基準についてみると、同一税務署管内で同一業種を営み、部屋数は原告の本館の二倍以下で(ただし、別館を基準とすれば二倍を超え、昭和三九事業年度の「C」社、同四一事業年度の「A」社は二倍以上である。また、その下限は原告の本館及び別館の部屋数よりも多い可能性がある。なお、原告代表者尋問の結果によれば、原告の本館との間は徒歩で約一五分かかる程離れていることが認められるから、別個の旅館というべきである。)料金はおおむね類似(別館は同業種法人よりもむしろ高い。)するというのみで、具体的な立地条件や設備(部屋の広さ等)等についての類似性は何ら主張立証がされておらず、類似性の立証を欠く疑いがある。

次に、被告は、右同業種法人の総収入金額を宿泊収入と休憩収入とに区分するに際し、原告の昭和四〇事業年度の当初申告の割合を使用して主張するが、同伴旅館業者が収入金の脱漏を図るときに全収入金額に占める宿泊収入と休憩収入の構成割合をそれ程厳密に重要視するかどうか疑問であるうえ、原告の右割合を前記のような類似性しか認められない同業種法人に、それも五事業年度に対し一律に適用することが合理的であるといえるかどうかも疑問が残る。なお、右割合を「ホ」社及び「ロ」社の割合と比較してみても、その比較件数がごく少ないうえ、約六、七年も隔りがあり、さらに原告の宿泊収入及び休憩収入には飲食物収入も含むのに対し、「ホ」社及び「ロ」社のそれには含まれていないなどの差もあるから、宿泊、休憩収入にかかる飲食物収入が宿泊収入と休憩収入にそれぞれの率と同じ割合で含まれていると認められない限り、右比較の結果をもって前記の合理性を裏付けることはできないし、そのような事実を認めるべき証拠は存在しない。

(2) 被告は、前記予備的主張の正当性について、原告の女中の申述を援用して主張する。

証人畠中幸吉の証言により成立を認めうる乙第二号証及び同証言によれば、原告の本館が開業した昭和三五年から同四一年七月頃まで原告に女中として勤務した惣滑谷美貴(供述時六四才)は、同四五年五月七日に被告所部係官畠中幸吉の質問に対し、三七年には平均一五、六組となり、金額でいうと宵が一〇組、一万五〇〇〇円、泊りが六組一万二〇〇〇円、平均二万五〇〇〇円ないし二万六〇〇〇円だったと思う。三七年、三八年になるといくらか上ってきて一日三万円を切れる位になった等と供述していることが認められる。しかしながら、右供述は、供述時から七・八年も前のことを単なる記憶のみで供述していること、右供述中の数値はおおまかなものであるうえ、女中という立場上その数値の正確性にも疑問があること等からすると、ただちに右供述を採用することはできないから、被告の前記主張は失当である。

さらに、被告は、渋谷旅館組合長の同伴旅館一店舗当たりの利用客数の推移が同組合の組合員数の増減に比例しているとの意見を援用して、昭和四六、四七事業年度の同業種法人の利用回数から前記予備的主張の正当性を裏付けようとする。前掲乙第六号証、同証人和田清の証言及び原告代表者尋問の結果によれば、渋谷旅館組合長有賀千晴は、東京国税局長の照会に対し、昭和五一年一一月一九日付で同伴旅館の一店舗当たりの利用客数の推移は、明確な統計がないが組合員数の増減に比例しているように思えるとの回答をしていること、しかしながら、同伴旅館と普通旅館の合計の組合員数は、三八年一四一人、四一、四二年一四八人(以上の組合員数のうち、同伴旅館対普通旅館の割合は、六〇対四〇)、四六年一三三人、四七年一二一人(同じく五〇対五〇)と回答する一方、昭和三八年の一店舗当たりの利用客数を一〇〇とした場合の四一、四二年の割合は一一〇、四六年の割合は八五、四七年の割合は八〇と回答しており、組合員数に比例するとして計算した数値と五以上の開きがあることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定の事実によれば、渋谷旅館組合長が前記のような判断をした根拠が不明であるうえ、その記載はかなりおおまかなものと推認され、右組合長の回答をただちに採用することはできない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告の前記主張は失当である。

(3) 右認定の事実によれば、予備的推計の合理性を肯定するには種々の疑問があり、結局、合理性を認めることはできないといわざるをえないから、被告の予備的推計もとりえないものである。そして、その他全証拠によるも原告の収入金計上洩れ金額を合理的に算出する方法はこれを見出すことができない。

4  所得金額

以上認定のとおりであるから結局、昭和三八、三九事業年度については、確定申告欠損金額八万三、七二四円及び修正申告所得金額八五万六、二〇五円を超える所得金額についての証明がない。同四〇事業年度については、修正申告所得金額九〇万六、八〇九円に広告宣伝費中否認二〇万円、雑費中否認二、〇〇〇円及び減価償却超過額八二万四、五二六円を加算すると所得金額は一九三万三、三三五円となる。同四一事業年度については、確定申告所得金額六一万〇、四七五円に修繕費中否認一万八、四四〇円及び減価償却超過額七六万〇、一二五円を加算し所定の算式により算出した右認定にかかる同四〇事業年度の所得金額に対する未納事業税認定損七万四、五九〇円を減算すると(未納事業税認定損の算式、一五〇万円×〇・〇六=九万円、四三万三、三〇〇円×〇・〇九≒三万八、九九〇円、合計一二万八、九九〇円、申告分五万四、四〇〇円、差引金額七万四、五九〇円)、差引所得金額は一三一万四、四五〇円となる。同四二事業年度については、確定申告所得金額一〇九万七、六七六円に営業費中否認三二万一、三九五円及び減価償却超過額五九万四、五四一円を加算し、所定の算式により算出した右認定にかかる同四一事業年度の所得金額に対する未納事業税認定損四万二、二四〇円を減算すると(未納事業税認定損の算式、一三一万四、四〇〇円×〇・〇六≒七万八、八六〇円、申告分三万六、六二〇円、差引金額四万二、二四〇円)、差引所得金額は一九七万一、三七二円となる。

したがって、本件各更正は前記各金額を超える部分(ただし、昭和三八事業年度については全部)について違法であり、取消しを免れない。

三  次に本件各決定について判断する。

以上認定の事実によれば、昭和三八及び三九事業年度についての各重加算税賦課決定(ただし、昭和三八年事業年度については異議決定で一部取り消された後のもの)は、違法として取消しを免れず、また、原告が昭和四〇ないし同四二事業年度について計上した経費等の一部が認められないことは、前記認定のとおりであるが、原告において課税標準等の計算の基礎となる事実を隠ぺい仮装したものと認めるべき具体的事実を認めるべき証拠はないから、右各事業年度についての重加算税賦課決定(ただし、昭和四二事業年度については、昭和四五年四月三〇日付決定で一部取り消された後のもの)は、いずれも違法として取消しを免れないが、昭和四二事業年度についての過少申告加算税賦課決定は、違法と認めるべき根拠はないから、その取消しを求める請求はその理由がない。

四  結論

以上の次第で、本件各更正は、所得金額を昭和三九事業年度につき八万六、二〇五円、同四〇事業年度につき一九三万三、三三五円、同四一事業年度につき一三一万四、四五〇円、同四二事業年度につき一九七万一、三七二円として計算した限度内で適法であるが(なお、昭和四二事業年度についての過少申告加算税賦課決定もまた適法と認められる。)、右限度を超える部分及び昭和三八事業年度の更正並びに各事業年度につるから、被告の右譲渡所得金額の主張は正当と認める。

四  以上によれば、原告の本件係争年分の総所得金額は、昭和五一年分は被告主張のとおり五八八万五八九〇円となり、昭和五二年分は被告主張の八四七万三六九円を下らず、昭和五三年分は被告主張のとおり七五一万五五六一円となるところ、係争各年分の各所得控除額については被告主張のとおりであることにつき当事者間に争いがないから、本件係争年分の各課税所得金額は、昭和五一年分は被告主張のとおり四六八万七〇〇〇円となり、昭和五二年分は被告主張の七〇八万八〇〇〇円を下らず、昭和五三年分は被告主張の七〇八万八〇〇〇円を下らず、昭和五三年分は被告主張のとおり六〇四万七〇〇〇円となるから、右各総所得金額の範囲内でなされた本件各更正処分及び右各更正処分を基になされた各過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

五  結論

以上の次第であるから、本件各更正処分等の取消しを求める原告の本訴請求はいずれも失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本武 裁判官 澤田経夫 裁判官 加登屋健次)

別表一1 昭和三八事業年度(自三七、一二、一 至三八、一一、三〇)

<省略>

(注) △印は、負数を示す。

別表一2 昭和三九事業年度(自三八、一二、一 至三九、一一、三〇)

<省略>

別表一3 昭和四〇事業年度(自三九、一二、一 至四〇、一一、三〇)

<省略>

別表一4 昭和四一事業年度(自四〇、一二、一 至四一、一一、三〇)

<省略>

別表一5 昭和四二事業年度(自四一、一二、一 至四二、一一、三〇)

<省略>

別表二

<省略>

<省略>

別表三

<省略>

別表四 原告代表者淤見広及び同人の家族の収支状況

<省略>

△印は負数を示す。

別表五

(△は欠損)

<省略>

別表六

<省略>

<省略>

別表七

1 岩田とき名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.2106)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<4>原告の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

2 石川まさえ名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.5306)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<4>原告の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

3 淤見広名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.3247)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<4>原告の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

<省略>

<省略>

4 淤見広名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.7471)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<4>原告の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

別表八 受取利息の状況

<省略>

別表九

同業種法人

<省略>

株式会社東荘

<省略>

別表一〇

<省略>

別表11 同業種法人の客室一室の一年間の利用回数の計算表

<省略>

(備考) 上記「<4>」及び「<8>」欄の客室の等級区分は、客室一室当たり料金が同額のものを1グループとし、当該料金の高額なグループから順次A(特)、B(上)、C(中)、D(下)の等級に区分したものである。

別表12 原告の収入金額の計算表

<省略>

原告の収入金額の計算表

<省略>

原告の収入金額の計算表

<省略>

別表13 昭和46事業年度同業種法人の客室一室の一年間の利用回数の計算表

<省略>

別表14 昭和47事業年度同業種法人の客室一室の一年間の利用回数の計算表

<省略>

別表一五

<省略>

別表一六

<省略>

別表十七

<省略>

<省略>

別表十八

<省略>

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